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最善を尽くせば天が味方してくれる

 古くから伝わる四字熟語やことわざ、名言には、先人たちの知恵が凝縮されています。国や時代背景、慣習が異なるにもかかわらず、先人の言葉が現代に生きる私たちの心に染み入るのは、古今東西変わることのない、人としての生き方や、心のあり方、人と人とを結ぶ絆の大切さを教えてくれるからでしょう。今回は、アメリカのインディア州で起きた奇跡の体験を、ことわざと絡めて紹介したいと思います。

運否天賦(うんぷてんぷ)

 運の良し悪しは天がそうさせるものであり、これを変えることはできない。運は天にあり。運命に任せるという意味もある。

コースを大きく外れたボールの行方

 4年に一度のスポーツの祭典、オリンピック、パラリンピック。2016年も、多くの感動と勇気をもらえましたよね。

 パラリンピックが終わる頃から、秋の気配が高まり、スポーツを始めるのに最適なシーズンとなります。夏の間、運動を控えていた方も、再開を考えておられるのではないでしょうか。そこで今回は、男女問わず人気の高いスポーツ、ゴルフにまつわるお話を紹介したいと思います。

 今から半世紀以上前の1959年のこと。アメリカのフォード夫人は、インディアナ州の南部、クロウフォード郡で、仲間と共にゴルフを楽しんでいました。彼女のフォームはお世辞にも美しいとは言えませんでしたが、パワーと熱意だけはあり、大きく振り上げたクラブに当たったボールははるか遠くへ飛んでいきました。

 周囲の予想通り、ボールは大きくコースを外れて、木の周辺に落ちた様子。「あれ、ボールが見当たらない。どこへ行ったのかな?」。ふと1本の木を見上げると、上方に鳥の巣があります。まさかと思って中を見たところ、なんと、ボールは巣の中に入っているではありませんか。

第二打目のチャレンジでまさかの奇跡が

 巣に入るなんて、ホール・インより難しいのよ」。すっかり調子づいた夫人は、そう言うや否や木に登り始めました。そして、仲間が止めるのも聞かず、枝を背にしてその場所から第2打目にトライ。「こんな木の上からまともに打てるはずがない」。誰もがそう思っていました。

 ところが、夫人の打ったボールはグリーンに向かうと、そのまま転がっていってホール・イン! 皆、おどろいて、一瞬言葉を失いました。周囲から大喝采を浴びたフォード夫人は言うまでもなく、その日一日、爽快な気分で過ごせたそうです。

 第一打は鳥の巣の中に、第二打目でホールに。偶然とは言え、ほぼ起こり得ない出来事ですよね。これぞ、まさに「運否天賦」。運を天に任せて勝負に出た、フォード夫人の勝利です。逆に夫人が、巣の中に入ったボールを打たずにあきらめたなら、このような感動的な奇跡に遭遇することはなかったはず。

「運は天にあり」とも言うように、自分の力ではどうにもできないことだと思っても、最善を尽くして結果を待てば、彼女のように奇跡を起こせるかもしれません。ギブアップする前に自分のできることをやってみる。それが開運の秘訣とも言えそうですね。

(構成・文/松岡宥羨子)

 

※参考文献/『信じられない「偶然」のいたずら』(日本文芸社)

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