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猫と暮らすために覚えておきたいことわざ

 古くから伝わる四字熟語やことわざ、名言には、先人たちの知恵が凝縮されています。国や時代背景、慣習が異なるにもかかわらず、先人の言葉が現代に生きる私たちの心に染み入るのは、古今東西変わることのない、人としての生き方や、心のあり方、人と人とを結ぶ絆の大切さを教えてくれるからでしょう。今回は、2月22日の猫の日にちなんで、猫と人間にふさわしいことわざを、エピソードを交えて紹介したいと思います。

無理が通れば道理引っ込む

 正しくないことが平気で行われる世の中になれば、道理にかなうことは行われなくなるという意味。また、1786年に松葉軒東井によって成立した、『譬喩尽(たとへづくし)』の中に、「無理通らば道理其下退(そこのけ)」ということわざがあり、難を避けるためには、道理であっても引っ込んでいたほうが良いという譬喩(ひゆ)にもなっている。

猫も犬もルーツは同じ哺乳類

 2月22日は猫の日ですね。愛猫家の文化人とペットフード協会が協賛して1987年に制定されたそうです。日本のみならず、猫の日はアメリカ、ロシアなどにもあり、国際猫デーは8月8日。犬と同じように、世界中の人々から愛されている愛玩動物です。

 けれども猫は、犬のようにしつけられないし、飼い主に忠実ではありません。猫も犬も、ルーツをたどれば、同じミアキス(約6500万年前〜約4800万年前に生息)という肉食の哺乳類ですが、進化の過程で大きく違っていったのです。

 ミアキスは、木の上で暮らし、森林で小動物を獲っていました。獲物を見つけると、忍び寄って捕まえるので、単独行動が自然でした。約3000万年前からあとに、ニアキスから進化した生き物が枝分かれしていき、その中で、ネコ目—ネコ科と、ネコ目—犬科という、猫、犬の祖先が誕生します。

 ネコ目—犬科は、平原で、集団で狩をするようになり、ネコ目—ネコ科は、ミアキスの性質を受け継いで、森林で獲物を捕まえました。現在、ペットとして飼われている猫が、犬と違って社会性がないと言われるのは、ルーツ・ミアキスの性質を受け継いできたからだと言われています。

意外に多い猫の恩返し

 そうした両者の性質から、「犬は3日飼えば3年恩を忘れぬ」「猫は3年飼っても3日で恩を忘れる」という対照的なことわざも生まれました。確かに、忠犬八公のように飼い主に忠実に生きた猫がいたとはあまり聞きません。けれども、猫に命を救われた話や、恩返しされた話は、日本にも多く残されています。

 昔、船乗りの間では、オスの三毛猫が幸運を招くと言われていました。船内では必ず猫を飼っていて、猫がさわげばシケに遭い、眠っていれば穏やかだと信じられていたそうです。また、シケに遭ったとき、猫が北の方角を向くので羅針盤の代わりになるとも言われたそうです。さらに、第一次世界大戦の最中、別の船から猫が逃げ出してきて住みつき、その船が撃沈を免れたという逸話も残っています。

 三毛猫と言えば、招き猫のモデルですね。現代では、右手を挙げる猫が福を呼び、左手を挙げる猫は客を呼ぶと言われています。その由来は、江戸時代にありました。当時、餌をもらっていた三毛猫が、恩人の窮地に小判をくわえて現れたという話が伝わっています。左手を挙げ、右手に小判を抱えた招き猫は、その話がもとになっているそうです。

 一方、右手を挙げる猫は、彦根藩主の井伊直孝が、狩の途中、雨に降られて困っていたところ、荒れ寺(現在の、世田谷区にある豪徳寺)から出てきた猫が、雨宿りするよう手招きしたことに由来しています。ちなみにこの猫の墓は今も豪徳寺にあるそうです。

 ところで、この猫の名前は「タマ」。タマは猫の代名詞のようになっていますが、名前の由来は諸説あります。1つ猫が玉で遊ぶから。2つ目は「玉のようにかわいい」という意味から。そして3つ目が、「魂(たま)」。猫が霊的な動物であるという理由から付けられたとも言われています。

 そう言われてみれば、とてもミステリアスな動物ですよね。猫の行動は人間には読めないし、人間になついても絶対に服従しない。それでいて、人間の心をしっかりとつかみます。1986年に、19人の漫画家によるエッセイ集、『猫が通れば道理引っ込む』が刊行されましたが、まさに人間と猫の間では、「無理が通れば道理引っ込む」ということわざがぴったり当てはまるような気がします。猫に魅せられて、猫と共同生活を送る人間は、どんなに猫に理不尽なことをされても、猫に従って暮らしていくしかないのでしょう。(構成・文/松岡宥羨子)

 

参考文献・『ジンクスの不思議』(河出書房新社)、『名前の不思議』(青春出版社)

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