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成長を促し、若さを保つために役立つ古代中国の教え

 古くから伝わる四字熟語やことわざ、名言には、先人たちの知恵が凝縮されています。時代背景や慣習が異なるにもかかわらず、先人の言葉が現代に生きる私たちの心に染み入るのは、過去も今も変わることのない、人としてのあり方や、人と人とを結ぶ絆の大切さを教えてくれるからでしょう。今回は『論語』のエピソードから、公私にわたって役立ちそうな先人の教えを紹介したいと思います。

過ちは則ち改むるに憚(はばか)ること勿れ

 孔子の教えを記した『論語』の学而編の中の一節。“君子不重則不威。学則不固。無友不如己者。主忠信。無友不如己者。過則勿憚改。”の中の一節。「君子は慎重でないと威厳がない。他から学ぶようにすれば啓発される。偽りのないよう心がけることが大事で、自分より劣った他人の点に狎(な)れるべからず。過(あやま)ったことに気付いたら、改めることに対してためらってはならない」との意。

自分に誠実であれば周囲からも信用される

 9月の国民の祝日、敬老の日。この祝日は、多年にわたって社会に尽くしてきた老人を敬う日です。経験豊富はお年寄りとの会話はためになることが多いですよね。一方で、年をとると頑固になるのは確か。これは老化現象が大きく関係していると言われています。逆に「若いな」と感じるお年寄りは、思考や発想が柔軟ですよね。

 老人に限らず、かたくなに持論を通そうとする人はいるもの。ことに、人は他者から間違いを指摘された際、それが正しいと気付いても、正すには勇気がいるものです。しかし、紀元前5〜6世紀の思想家、孔子は「過ちを正すことを躊躇してはならない」と、弟子に教え諭しており、そのエピソードが論語にも書かれています。

 あるとき、孔子は衛(中国の周代の諸国)の蘧伯玉(きょはくぎょく)の使いの者に、主人の様子を尋ねました。使いが、「旦那さまは過ちを少なくしようと努めていますが、まだ十分できていないようです」と答えました。その使いが帰った後、孔子は大いに彼を褒めました。孔子の考える“過ち”とは、天の教えに添わない思考と行動を意味していました。すなわち、「過ちを正す」とは、天の教えに対して我執を捨て去ることにあったのです。孔子は、使者の力量を褒めると同時に、彼を感化した蘧伯玉の人徳に改めて惹かれたのでした。

 思うままに振る舞って道(天の教え)に外れない人間は孔子にとっての理想で、過ちを少なくしようとして我執を捨てるよう努めることは、人間の根本的な生き方だと考えていました。また、その努力ができる人こそ君主であると弟子に説き、「過則勿憚改」の大切さ、すなわち「過まった場合は、ためらうことなく改めよ」と諭したのです。

 現代人にとって、この努力は単に、「自己に忠実であること」と理解されていますが、自己に忠実であることが人としての成長を促し、さらに、周囲の信用を得ることにもつながるのではないでしょうか。そのためにもぜひ、柔軟な姿勢を忘れずにいたいですね。

(構成・文/松岡宥羨子)


※参考文献
『書道研究 日本書藝』(大日本書芸院)

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