「海のミルク」と呼ばれるほど、カルシウムを豊富に含む牡蠣は、世界のさまざまな地域で食されています。牡蠣の生息地は、日本全国から朝鮮半島、中国大陸に及びます。アメリカ西海岸に分布しているものは、日本から輸出された“種牡蠣”によって増えたと言われています。
牡蠣は、日本では、縄文時代から食されていたことが分かっています。貝塚からは、たくさんの牡蠣の殻が見つかっており、ハマグリに次いで多く食べられていました。現在、市場に出回っている牡蠣のほとんどは養殖です。養殖は、江戸時代初期には行われていたと言い、ヨーロッパではローマ時代にまで遡ると言われています。
国内の牡蠣の産地は、広島県、宮城県が有名です。明治の頃までは、広島から大阪まで牡蠣を積んだ船が運行し、土佐堀(とさぼり)、堂島、道頓堀などで行商が行われました。船上で牡蠣が売り買いされる様子は、晩秋の風物詩になっていたようです。また、この行商は、屋形船で牡蠣料理を食べさせる、牡蠣船(かきふね)の起源とも言われています。
牡蠣には、エネルギー源となる、旨味成分のグリコーゲンが多く含まれています。グリコーゲンは、疲労回復やスタミナ不足の解消に効果を発揮するほか、肝臓の働きも高めてくれます。牡蠣の旬は冬で、グリコーゲンの蓄積量が増えます。ことに11月〜2月(4月との説もある)ころは、最も味が良いと言われています。最近では、夏に水揚げする牡蠣も登場し、季節を問わず美味しく食べられるようになりました。
また、カルシウムはもとより、血圧を安定させてコレステロール値を下げるタウリンや、ビタミンB1、B2、B12、Eなどのビタミン類、鉄、カリウム、銅、亜鉛、ヨードなども豊富に含んでいます。亜鉛は、インスリンの働きを助けたり、味覚、嗅覚、生殖機能を正常に保つ働きがある成分で、牡蠣含まれる亜鉛の成分量は、なんと、豚肉肩ロースの5倍以上と言われています。
なお、殻つきの牡蠣を網焼きや生でいただく際には、身と一緒に汁もいただきましょう。海水を含む汁には、多くの栄養素が含まれているのです。また、生牡蠣にレモンをかけて食べると、レモンに含まれるビタミンCが、鉄分の吸収を良くし、タウリンの損失を防ぎます。抗酸化作用も高めてくれるので、美容にもおすすめです。
美味しい牡蠣は、乳白色で身に艶があり、ぷっくりと膨らんでいます。また、黒いヒダの部分が鮮やかものほど新鮮。殻付きは、口をかたく閉じ、ずっしりと重いものを選びましょう。食品店では、パック入りの「加熱用」「生食用」の牡蠣を見かけますが、違いが分かりますか? 生食用の表示があるものは、紫外線で殺菌した海水で飼育された牡蠣で、生でも食べられるよう処理されています。一方、加熱用は殺菌処理が施されていないので加熱が必要。カキフライ、土手鍋、牡蠣飯などにしていただきましょう。
日に日に寒さを感じる今日この頃……低カロリー、高タンパク質の牡蠣をいただいて、いつまでも健康と若さを保ちたいものですね。
※参考資料:『血液がサラサラになる食事と生活』(幻冬舎)、『旬を味わう魚の事典』(ナツメ社)、『ダイジェスト版五訂 食品成分表』(女子栄養大学出版部)
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