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春キャベツを堪能する ~ 薬効植物として重宝されてきた万能野菜 ~

色とりどりの花が咲きみだれ、緑が美しさを増す季節となりました。春を探しに散策しているとお腹も十分にすいて、食事がいっそう美味しく感じられます。ことに、収穫を待つばかりのキャベツ畑から漂ってくる甘い香りは食欲をそそられますよね。

キャベツには、春キャベツ冬キャベツの二品種あり、春から初夏にかけて出回る春キャベツは、冬キャベツに比べて明るい黄緑色で、柔らかく巻きがゆるいのが特徴です。水分を多く含み、甘みもあるので、サラダにすると美味しくいただけます。また、水に流れやすく加熱に弱い性質を持つ、ビタミンCビタミンU(キャベジン)が豊富に含まれていますから、生でいただけば栄養成分の損失を防げます。

 

 ビタミンCは、風邪やガンの予防、疲労回復、ストレス緩和などに有効です。また、抗酸化作用があり、コラーゲンの生成も助けてくれるので、美肌効果があるとも言われています。ビタミンUは胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの胃腸障害の予防に有効なほか、脂肪肝予防や肝臓の解毒作用を助ける働きが。ほかに、ビタミンB1、B2、E、Kなどのビタミン群を多く含み、カリウム、カルシウム、食物繊維も豊富に含まれています。

 

キャベツが優れた薬効植物であることは、はるか昔の人々も知っていました。キャベツが初めて栽培されたのは5000年以上前と言われ、古代エジプトの王たちも宴の前にキャベツを食べ、古代ギリシア・ローマでも、キャベツ料理を食べて二日酔いを防いでいました。古代ギリシアの賢人、ピタゴラスヒポクラテスは、キャベツに薬効があるとして積極的に食べることを勧めていました。中世に入ると、キャベツはヨーロッパで薬草として栽培され、咳止めのシロップ、神経痛のための軟膏、湿布薬などが作られていたそうです。

 

キャベツが初めて栽培されたときは、葉が巻かれていない状態でした。結球(葉が重なり合って球状になること)は古代ローマ時代からという説や、中世の頃からという説がありますが、いつから結球になったのか分かっていません。現在残っている最古の記録は16世紀にヨーロッパで出版された植物誌で、結球キャベツの絵が描かれているそうです。

 

 日本に初めてキャベツが渡来したのは江戸時代初期(18世紀初頭)で、葉の巻かれていないキャベツの種(たね)がオランダ人によってもたらされました。しかし野菜としては定着せず、観賞用として改良が重ねられた結果、葉牡丹が生まれました。一方、結球キャベツの種は、1853年の開国を機に欧米人が日本へ持ち込んで栽培に成功。明治時代初期に、キャベツを含む西洋野菜の栽培が北海道で始まり、本州へと広がっていくのです。

 

 当時の日本には、野菜を生で食べる習慣がほとんどなく、キャベツも火を通して食べていたのですが、明治37(1904)年に東京・銀座の洋食店が、ポークカツレツにキャベツの千切りを添えたところ大好評に。以降、生のキャベツが広く食されるようになりました。

 

古代から薬効のある野菜として重宝されてきたキャベツ……。栄養がたっぷり詰まったフレッシュなキャベツを食卓にたくさん登場させて、美味しくいただきたいものですね。

 

 

 

※参考文献:ダイジェスト版 五訂 食品成分表(女子栄養大学出版部)、農林水産省 キャベツの歴史、『まるごとキャベツ』(絵本塾出版)

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