寒い日に、温かいシジミのお味噌汁をいただくと体が温まりますよね。小さなシジミの身を、貝殻から取り出して食べるのは面倒と言う人もいると思いますが、この小粒の貝には、私たちの体に必要不可欠な栄養がたくさん含まれているのです。
シジミは先史時代より食用とされてきた馴染み深い二枚貝です。小粒とは言え、大きいものでは殻長(左右の殻の最大幅)3㎝以上。アサリに引けを取らない大きさで、カルシウム、鉄、ビタミンB群などの栄養素も、他の代表的な二枚貝に比べて豊富です。
国内のシジミは、ヤマトシジミ、セタシジミ、マシジミの3種で、セタシジミは琵琶湖水系の固有種、ヤマトシジミは河口や、海水と淡水が混じり合う汽水湖などにすみ、マシジミは淡水の河川や湖沼に生息しています。ただしセタシジミ、マシジミが激減した影響で、現在、国産として出回っているシジミの大半は漆黒のヤマトシジミです。
通年食されるシジミですが、旬は基本的に年2回。1〜2月が旬の「寒シジミ」はマシジミ、セタシジミ(3、4月とも)で、冬を越すための栄養が身に濃縮されています。8月が旬の「土用シジミ」はヤマトシジミで、産卵を控えた夏はもっとも身が肥え、昔から「土用シジミは腹薬」と言われるほど、肝機能を活性化する栄養を豊富に含みます。
シジミの主な成分は、ミネラル(カルシウム、カリウム、鉄など)、ビタミンB1、B2、B12、タウリン、アミノ酸の一種である、オルニチン、メチオニン、アルギニンなどです。シジミには、タンパク質の合成に欠かせない必須アミノ酸がバランス良く含まれているので、タンパク質も良質であるのが特徴です。
中でも肝機能を高めるのは、オルニチン、メチオニン、アルギニン、タウリン、ビタミンB12などで、オルニチンは、肝細胞の再生を促して胆汁の分泌を促進するタウリンとともに、肝臓の解毒作用を活発にします。タウリンには、血中コレステロール値を低下させ、動脈硬化を予防する効果や、むくみや便秘予防、目の網膜を守る働きもあり、塩分が原因の高血圧を改善するため、脳卒中や心臓病の予防にもなると言われています。
さらに、赤血球のヘモグロビン生成に関わる鉄とビタミンB12が、悪性貧血を予防。骨や歯の発育を促すカルシウムも豊富に含んでいます。また、ミネラル含量が多いことから、風邪や感染症の予防、がん細胞の撃退にもつながると言われています。つまり、非常に栄養価の高いシジミを、努めて食卓に取り入れるようにすれば、生活習慣病対策につながるのです(ただし、C型肝炎などの肝臓病にかかっている方や、アルコール性の肝障害を持つ方などは、鉄過剰になりやすく、有害になる恐れがあるので、摂取を控える必要があるとも言われています)。
シジミは、うま味成分のコハク酸を含むため、出汁(だし)が美味しいのも特徴です。味噌汁や吸い物はもちろん、炊き込みご飯や雑炊、佃煮、パスタなど、調理法をいろいろと工夫してたっぷりといただき、病気知らずの健康体をつくっていきたいものですね。
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