今年もクリスマスの季節がやってきました。街路樹をはじめ、レストランやホテルのエントランスも、きらきらしたイルミネーションで彩られ、街はクリスマス一色。そんな光景に、子供たちはもちろんのこと、大人だって心が弾みますよね。
そして、クリスマスの飾り付けに欠かせない植物と言えば……。そう、真紅と緑色のコントラストが鮮やかなポインセチアです。
ポインセチアには花びらがなく、苞(ほう)と呼ばれる葉の一種が赤く色づき、枝の先端に小さな花を咲かせます。ポインセチアという名前は、1825年頃に、メキシコに駐在したアメリカの大使、ジョエル・ロバーツ・ポインセットの名にちなんで付けられたと言われています。植物学者でもあった大使は、メキシコで自生していたこの植物に出会い、アメリカへ持ち帰って園芸植物として広めました。
自生しているポインセチアは低木ですが、20世紀に入ってから、専門家や研究機関などの間で盛んに品種改良の研究が行われた結果、現在のような観賞用ポインセチアが誕生。クリスマスの代表的な植物として世界中に広まりました。ちなみに日本にお目見えしたのは、明治時代中期だそうです。
近年はさらに改良が進み、葉の形に特徴のあるものや、ピンク色、クリーム色をした葉、マーブル模様など、さまざまな品種が登場して選ぶ楽しみもぐんと増えました。
日本ではクリスマス・シーズンに出回るため、寒さに強いと思われがちですが、熱帯性ですから寒気は苦手です。室内温度が15℃を下回る11〜3月一杯ぐらいまでは室内で管理し、日中は良く日の当たる窓際に置いてあげると良いようです。また、毎シーズン色づいた葉を鑑賞するには、短日処理をする(9月下旬から40日間、17時〜翌朝8時まで、段ボールなどをかぶせて光をさえぎる)ことだと言います。
ところでポインセチアに、猩々木(ショウジョウボク)という和名があることをご存知ですか? 猩々とは、酒好きで人の言葉を解す古代中国の伝説上の動物で、猿に似ていますが、人のような顔と脚を持ち、日本では赤ら顔と赤い長髪で表されます。つまり真っ赤に色づくポインセチアが、猩々の容姿に似ていることから名付けられたのです。
ポインセチアによく似た猩々草、赤と緑の配色のショウジョウインコ、ショウジョウトキ、ショウジョウエビなどは、皆、猩々を連想させる“赤色”が特徴の生物です。また、酒や酢に誘引される赤目のショウジョウバエも、酒好きの“猩々”にちなんだ名です。
伝説の動物、猩々の話が日本に伝わった時期は不明ですが、東北、関西、近畿、中国地方などには伝説が残されています。江戸時代には陽気な酒の神として親しまれ、今も能の演目や祭礼に登場。秋田県横手市では“猩々の道標”を記念した十文字の猩々祭りが開かれ、愛知県名古屋市の旧東海道鳴海宿を中心とした神社の祭礼には、中に人が入った巨大な猩々が参列します。また、山車に猩々人形を飾る地域も多く見られます。
いずれも、姿形はとても怖いのですが、猩々は福をもたらす神様として大切に受け継がれてきました。猩々木の名前を持ち、「祝福」「聖なる願い」などの花言葉を持つポインセチアも、幸福のシンボルとして世界の人々から愛されてきた植物なのです。