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苦悩に苛まれたときにヒントになる言葉

 古くから伝わる四字熟語やことわざ、名言には、先人たちの知恵が凝縮されています。国や時代背景、慣習が異なるにもかかわらず、先人の言葉が現代に生きる私たちの心に染み入るのは、古今東西変わることのない、人としての生き方や、心のあり方、人と人とを結ぶ絆の大切さを教えてくれるからでしょう。今回は、四字熟語の意味と使い方を、実際の体験談と絡めて紹介したいと思います。

雲散霧消(うんさんむしょう)

 雲や霧が、風や太陽の光で跡形もなく消え去るように、物事がすっかり消えてなくなること。わだかまりや悩みがなくなって、すっきりした気持ちになる、という意味にも使われる。「雲消霧散」、「雲散鳥没(うんさんちょうぼつ)」とも言う。

悶々とした悩みを一瞬で吹き飛ばすには?

 悩んだり、落ち込んだりしたときは、カラオケや旅行をして、気分を変えると良いと言いますよね。でも、自信喪失に陥ってしまったときは、何を試しても“ダメな自分”がつきまといます。そうなると一時的に元気になっても、もとに戻ってしまいます。

 けれども、行き場のない悶々とした悩みは、誰にでも簡単に消すことができるのです。その体験の一つが、デール・カーネギーの世界的なロングセラー、『道は開ける』の一節にあるので紹介しましょう。

 デールは、20世紀初頭、YMCAの自己啓発の成人クラスで教鞭をとっていました。受講生の中に、自分と、自分を取り巻く環境のすべてに絶望していた青年がおり、彼は、かつて、ありとあらゆる悩みに苦しみもだえていました。

 たとえば、自分が痩せすぎていること、髪の毛が薄くなってきているのではないかといった外見上の悩みや、他人から悪く思われているかもしれないという精神的な不安がありました。そんな状態ですから、結婚したい女性に求婚することなど、怖くてできません。また、結婚資金も貯まらないのではないかという不安も抱えていました。

 ついに、身体の病気を疑うようになり、彼は会社を辞めてしまいます。そして、「自分は家族にも、周囲にも、神にさえも見捨てられた」と絶望し、死を考えるようになりました。そんなある日、彼はフロリダ旅行を決意します。「場所が変われば気分も変わるかもしれない」という思いからでした。出発の当日、彼は「フロリダに着いてから読むように」と、父親から手紙を渡されます。はたして、開封した手紙には思いもよらない言葉がつづられていました。

「息子よ、お前は我が家から2400㎞メール離れた場所にいるが、気分が変わったわけでもあるまい。何しろ、お前と同行したのはあらゆる悩みの根源である唯一のもの、お前自身だからだ」と。さらに、「お前を打ちのめしてしまったのは、お前の前に現れた事態ではなく、事態に対するお前の考え方なのだ。この意味がわかったら帰っておいで。治っているはずだから」と書かれていたのです。彼は父親の手紙に立腹しました。自分が求めていたのは、優しい慰めの言葉だったからです。

 その晩、彼はふと、マイアミの教会に立ち寄りました。教会では神父さんが「魂を制する者は街を落とし入れる者よりも強い」という聖書の言葉について説教をしていました。なんと、その内容は、父親のよこした手紙と同じだったのです。父親の言葉は正しかった……。そう気づくやいなや、頭の中で凝固していた悩みが一掃されました。

 間もなく、彼は職場に復帰し、思いを寄せる女性と結婚。5人の子供や友人に恵まれ、出世も叶い、充実した毎日を送りました。時に不安に駆られそうになっても、「人は自分の心で考える通りの人間になる」と悟っていたので、決してもとの自分に戻ることはありませんでした。

「私たちが日常生活で得られる心の安らぎ、喜びは、自分の居場所や持ち物や地位によって左右されるのではなく、気持ちの持ちよう一つで決まる。安らぎや喜びをもたらすのは、ほかならぬ自分なのだ」と、デール・カーネギーは本書を通じて述べています。

 悩みやわずらい事から抜け出すためには、自分の考え方を根本的に変えて行動すれば良いということです。デールの受講生のように、行動すれば、“きっかけ”となる何かを見つけられるでしょう。それに気づけば、多くの先人が語るように、悩みやわずらい事は一瞬で雲散霧散し、自分を取り巻く世界まで変わるのです

(構成・文/松岡宥羨子)


※参考文献・『道は開ける』(創元社)

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